2010年8月21日土曜日

Broの肖像 憧憬の風景 3(多摩湖自転車道)


 自然と人工物が邂逅する多摩湖の風景は一種独特な雰囲気が漂っているように思います。静かな湖面を暫し眺めているとデ・キリコが描いた形而上絵画の世界、 又はアルド・ロッシの空想都市のようにも見えてきます。そして懐古趣味的な取水塔の屋根の上にアヲハタジャムのような二等辺三角形の旗を靡かせてみたい、そのような衝動に駆られるのです。


 平地が続く「多摩湖自転車道」界隈の風景は坂の多い国分寺崖線沿いの風景とは異なります。水に恵まれない人が住めない場所でしたが、江戸時代に玉川上水そして野火止用水の開削によって新田開発がされて人々が暮らせるようになりました。畑や所々に雑木林の名残のようなものも見られて所謂「武蔵野」的な風景が残っています。


 「小平ふるさと村」に入ることができました。約1,000平方メートルの敷地に玉川上水の開通によって開発された新田村落(江戸中~後期の武蔵野新田の農家の姿)が再現されています。移築された立派な母屋の軒下に腰掛けて暫しの休憩をしました。茅葺屋根そして当時は風に飛ばされやすい関東ローム(火山灰)の土埃を防ぐために設けられた防風林が夏の日差しを遮ってくれます。居心地がよくエアコンの必要性を感じませんでした。


 「武蔵野」は私たち東京人の心の故郷であり憧憬です。しかし「武蔵野」の実相は曖昧で、それらしい面影を探して頭の中で継ぎ接ぎながら各々が理想の「武蔵野」を再構築しているようなところがあります。その点「野山北公園自転車道」から「多摩湖自転車道」へのルートには「武蔵野」らしさが今もなお姿をとどめているように感じます。
 「多摩湖自転車道」沿いのにはドメスティックなムードが漂うお店が並んでおり興味は尽きません。何故か1人で走るとお腹が空かないので一瞥して通り過ぎるばかりですが、家内と2人の時にはちょっと入ってみたいと思わせます。涼しくなったら今度は2人で出掛けてみようと思います。

2010年8月14日土曜日

Broの肖像 憧憬の風景 2(武蔵野の路 多摩コース)


 3つ目の御岳トンネルを潜り抜けると緑で覆われた狭山丘陵の山懐でした。風景の劇的な変化にちょっと感動です。


 「番太池」という小さな池を沿うように進むと少し離れたところに4つ目の赤坂トンネルがあります。その赤坂トンネルを抜けると薄暗く寂しい場所に出てきました。後からMTBに乗ってやって来た人はここで引き返していきます。どうやらこのトンネルが「野山北公園自転車道」の終着点のようでした。


  赤坂トンネルの先も更に細い道が続いていたのでそのまま進んでみました。草木が覆い被さる路を掻き分けるように入って行くと正面に柵で塞がれた牢屋のようなトンネルが現れました。暗いトンネルの奥に光が確認出来ることから向こう側へは通じている様子です。木に覆われ薄暗いこの場所は風通しが悪く、湿気も多く、また薄気味悪いところでした。汗の匂いを嗅ぎつけて蚊の大群が耳元に近づいてきたので早々に引き返しました。


  道に迷って再び「番太池」に戻った後、「かぶと橋」と表示れた方へ、鶯やヒグラシの鳴き声が響く未舗装路を進んで「多摩湖自転車道」を目指しました。小さな高圧タイヤはあちこちに石ころを弾き飛ばしながら前へ進み、短い距離ですが私もブロンプトンもちょっと頑張りました。
 多摩湖に本当に出られるのか?少し不安になりながら更に狭山丘陵を上っていくと一旦駐車場のような所へ出ました。そこから更に石段が続いています。幸い2人のハイカーが石段を降りてきたので。このまま進めば「カブト橋」へ出られることを確認できました。

 石段を上がった後、更に暫く上ると「かぶと橋」が見えてきました。この橋を渡ると多摩湖を周回する「多摩湖自転車道」に繋がっています。「番太池」から「かぶと橋」までは程よい距離で狭山丘陵の自然を満喫することができる路でした。ただ、この区間は未舗装路で途中に石段もあるため一般には自転車よりも歩く方が楽しめそうです。

 「野山北公園自転車道」から「多摩湖自転車道」へ向かう道程は軽便鉄道の廃線跡を感じられる小さなトンネルが続き狭山丘陵の自然も満喫できる変化に富んだコースでした。春は自転車道沿いの桜並木そして秋は狭山丘陵の紅葉が楽しめるでしょう。季節毎に訪れてみたい道です。
 今回走った「野山北公園自転車道」と「多摩湖自転車道」を含む武蔵村山市内の残堀川と新青梅街道が交差する地点から西武多摩湖線の「武蔵大和駅」までの10.2キロが「武蔵野の路 多摩コース」という散策路になっていることを後で知りました。また「武蔵野の路」とは東京都内を周回する全長270キロの散策路で全部で21コースあるようです。他の「武蔵野の路」を巡ってみるのも楽しそうです。

2010年8月12日木曜日

Broの肖像 憧憬の風景 1(野山北公園自転車道)


 東京、武蔵村山市から多摩湖まで鉄道の廃線跡を自転車で楽しめる道_「野山北公園自転車道」があることを知って早速ブロンプトンで出掛けてみました。3.7kmと短い距離ながら周辺はおおらかで懐かしい雰囲気に包まれ、終盤に小さな4つのトンネルが続く大変趣のある自転車道でした。


 JR青梅線で昭島駅まで輪行して昭島からブロンプトンで「野山北公園自転車道」まで向かいました。自転車道の入口付近は真新しい似た形をした家が道を挟むように建ち並び、廃線跡というよりも暗渠化された道のように見えます。また周囲に「野山北公園自転車道」の表示がなく地図だけでは自転車道の入口を見つけることは難しいように感じました。
 暫く走ると木漏れ日が降り注ぐ桜並木に入ります。そこは蝉たちの大合唱でした。五月蝿い!というよりも懸命に鳴く蝉たちを愛おしく感じて笑みがこぼれます。


 多摩湖に近づくに連れて自転車道の周辺は時間を遡るようにどこか懐かしい風景に変化していきます。この自転車道は大正10年(1921)に村山貯水池(多摩湖)への導水管の敷設工事のために敷いた軽便鉄道(羽村・山口線)の跡になります。工事が終了した後は暫く使用されていませんでしたが、昭和3~6年(1928~1931)と昭和18~19年(1943~1944)に山口貯水池(狭山湖)の堤防工事の砂利を運ぶために復活した後に廃線になりました。現在は自転車や徒歩で楽しめる「野山北公園自転車道」として利用されています。


 横田、赤堀、御岳、赤坂。自転車道の終盤は狭山丘陵を潜り抜ける小さなトンネルが続きます。これらの4つのトンネルから軽便鉄道(羽村・山口線)の名残を感じます。同時にトンネルは「野山北公園自転車道」の大きな魅力にもなっています。
 トンネルの中は想像以上に心地よくひんやりとした冷気が漂っています。暑さで火照った体は冷やされて汗も引いていくようです。トンネルを一気に自転車で走り抜けてしまうことが勿体なく感じて自転車から降りてゆっくり進みました。途中、犬の散歩をしている地域の方から声を掛けて頂きました。最近、私のようにこのトンネルを自転車で訪れる人が多いようです。