Broの肖像「茶房 はけの道」(小金井 念仏坂)


 小金井の人々が「はけ」と呼ぶ国分寺崖線(こくぶんじがいせん)の下からは湧き水が出ていることを以前にも何度か記事に書きました。また「小金井」とは、この辺りが太古より水の豊かな土地であったことから「黄金の井戸」と呼ばれ、このことが「小金井」の名前の由来と言われています。

 前回紹介をした坂を下った薬師通り沿いに「茶房 はけの道」という国分寺崖線の湧き水で淹れた珈琲が飲める小さな喫茶店があります。珈琲に使われる湧き水は「東京の名湧水57選」にも選ばれ、大岡昇平の小説「武蔵野夫人」の舞台にもなった貫井神社の湧き水を使っています。湧き水で入れた珈琲はとても柔らかい口当たりで身体と気持ちも和らぎ、また量もたっぷりあって、大満足の美味しい珈琲でした。
 珈琲を飲んだ後にサービスで日本茶も淹れて頂きました。この日本茶は旨味、渋み、苦み、3つのバランスが大変良く、最初に飲んだ珈琲の味が霞んでしまう程 絶品の味でした。珈琲豆や焙煎方法にもよるのだと思いますが、この湧き水と日本茶の相性は大変良いように感じました。

 「茶房 はけの道」の外観は一見普通の住宅です。よってお店へ入ることに少し勇気がいりますが、入ってしまえば大変和やかな雰囲気です。店内は大人5、6人も入れば一杯になってしまう程の大きさで、既に常連と思しいき4、5人のお客さんが寛いでいました。日本茶のサービスと共にお茶菓子も一緒に出てくることにも驚きました。喫茶店というより、感じの良い女将さんの人柄に惹かれ、ご近所のお茶飲み仲間が集うサロンという感じです。同席させて頂いたお客さんからこの辺りのお話等を伺いながら私達も楽しく休憩することが出来ました。


 「茶房 はけの道」の斜向いに途中から未舗装になる狭い路地あります。ここから先程来た崖の上の方向へ再び上がって行くことが出来ます。昔この路地は坂の途中に墓地があって、人々が念仏を唱えながら通ったので「念仏坂」と呼ばれれるようになったそうです。竹薮が迫る狭い路地は昼間でも薄暗く、墓地がなくなった今でもそのような雰囲気が少し残っています。
 「念仏坂」はそのまま崖の上まで行くことなく、この先で急に右へ曲がって前回の坂道と途中で合流しています。昔この辺の農民が崖の上と下を往来するために便利にしていた道だったようですが、恐らく農家が崖の上の土地を売った後、住宅や坂道の正面にあるレストランが建ったことで「念仏坂」の上半分がなくなり、途中で新しい坂と合流することになったと推測します。
 崖の下の畑で穫れた作物を崖の上にある江戸街道(現在の連雀通り)まで農民達が運ぶのどかな情景をブロンプトンを押しながら想像して坂道を上っていきました。「念仏坂」はそんなちょっとセンチメンタルな「残念坂」でもありました。

茶房 はけの道
所在地:〒184-0013 東京都小金井市前原町3-23-2
電話:042-384-9864
営業時間:13時から19時
休日:月曜日


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