TSRの肖像(PashleyというBrand)


 パシュレイによってライセンス生産されるモールトン。ライセンス品と聞くとあまり期待が持てないように聞こえますが、真面目にしっかり作られた英国車らしい仕上がりで、とても魅力があるモールトンです。
 フレーム構造は本家に比べて簡略化されているとはいえ、本家AMシリーズからのノウハウが注がれたTSRのためにデザインされたトラス構造を持ち、先代の APBに比べて大幅な軽量化にも成功しています。フレームの材料はAMシリーズのようなカイセイ社の中空チューブではありませんが、デダッチャイとレイノルズ、両社のクロムモリブデン鋼チューブが用いられおり、パシュレイのフレームビルダーによってロウ付け加工されたハンドビルドのフレームです。

 パシュレイは1926年から続く歴史のある自転車メーカーで、勿論モールトンより大先輩の自転車メーカーになります。日本ではモールトンの普及品を製造するメーカーであること以外は多くを知られていませんが、週に300台の自転車を生産する英国では大手の自転車メーカーです。TSRモールトン以外にも大変個性的な自転車を沢山製造しており、生産された自転車の半分は国外に輸出しています。英国国内では古くから続く自転車メーカーが今尚新しい魅力的な製品を作り、ビジネスでも成功していることに注目しており、会社の評価も高いようです。

 パシュレイにとってモールトンTSRは特殊な自転車であって、製品のラインアップには仕事に使うワーキングバイクやクラシックなスタイルのロードスター、レイノルズ531を使ったフレームをフィーチャーしたシングルと3スピードのビックホイール レサーバイク等々、いずれもスチールフレームを使った魅力的な自転車ばかりです。日本にもモールトンTSR以外の魅力的なパシュレイの自転車が輸入されるようになり、このような自転車が街に溢れるようになると日本の自転車環境はもっと面白くなると思います。街を走る自転車がロードレーサーとMTB、そして最近よく見掛けるハイブリッドバイクだけでは味気ないと思うからです。

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