TSRの肖像 ものづくり日本へ(へら絞 調布市 深大寺)


 選挙も夏も終盤、週末の東京は大変暑い1日となりました。
 午前中、買い物がてら久しぶりにパシュレイTSRに乗って出掛けました。家内と一緒に出掛ける時は何時もブロンプトン。よってこの日は朝からパシュレイに乗ってみたかったのです。

 此処は三鷹市の隣、調布市 深大寺です。トタン板の建物が前から気になっていた“金属へら絞り”の「小野製作所」まで行ってみました。

 金属のへら絞りについて詳しい知識はありませんが、へら絞りとは円盤のような円い金属板を回転させて“へら”を使って金属板を金型の形に塑性、成形する金属加工です。以前、見本市でへら絞りの行程を記録したビデオを見る機会があり、少し原始的な加工方法にも映りましたが二次元の平たい板から三次元の物が出来る様子は正に手品を見ているようでつい見入ってしまいました。

 このような小さな加工所が調布市内にどれだけ在るのか分かりませんが、東京には大田区をはじめ、画一化された大企業には真似する事が出来ないユニークなアイディアと優れた技術を持った職人がいる中小の工場が沢山あります。しかしご存知の通り昨今の景気低迷の煽りを受けて何処の工場も生き残りを賭けた厳しい状況が続いています。

 久しぶりにパシュレイの自転車に乗って改めてこの自転車の素晴らしさを感じました。走る事が本当に楽しい自転車、パシュレイTSRに乗るとどこまでも走って行きたい気分になります。
 パシュレイの一番の美点は鉄で出来た堅牢なフレームです。そしてこのフレームワークがあってこそモールトンのサスペンションが機能するのだと思います。一方でフレームの銀ロウ付けは御世辞にも上手とは言えません。日本人のフレームビルダーが作る自転車の方が恐らく仕上げは綺麗です。しかし、TSRのような手間の掛かる自転車を未だに作り続けることが出来るパシュレイ、そしてこのような自転車メーカーが成り立っているイギリスという国にとても心が動かされます。

 ある自転車店で日本の大手自転車メーカー ブリヂストンにはフレームビルダーが今ではわずか1人しか残っていないと聞きました。学生の頃、ブリヂストンの自転車に乗っていただけにこの話は衝撃であり、やるせない気持ちになりました。


 ものづくり日本と言われていたのは何時頃までだったのでしょう?効率化という名の下で要領よく上手にやれる者だけが生き残れる社会、ものづくりすることが出来ない国。残念ながら日本は暗雲垂れ込める状況にあると思います。

コメント

  1. こんにちは。
    パシュレイもお持ちだったのですね。
    色はホワイトですよね?
    良い意味でシンプルで素敵な自転車。
    サドルバッグもお似合いですよ^^

    残念ながら今の日本は、「良い物を長く使う」より、「使い捨て」が主の世の中になってしまったような・・・。
    企業側も低コストにこだわる結果、大切な部分を失いつつあるように思います。。。
    質より値段。
    良いものをつくっても高ければ売れない。。。
    この悪循環は何時になったら終焉を迎えるのか。。。
    なかなか難しい問題ですね。

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  2. wembley 様

    こんにちは
    何時もコメントを頂き有り難うございます。

    淡い色なので写真では上手く表現が出来ていませんが
    パシュレイの色はジルコニウムという淡いメタリックグレーです。
    メタリックにしては地味でちょっと昔の商用車のような色、
    良い意味でイギリスらしい落ち着いた色です。
    TSRのフレームは大変手間の掛かる凝った作りになっています。
    パシュレイはTSR以外にも鉄のフレームに拘った
    日本にはない大変魅力的な自転車を沢山作っています。

    サドルバックお褒め頂き有り難うございます。
    取り付け、取り外しが簡単なこと、
    サドルバックとしては容量がかなりあることが気にっています。
    今回は買い物が目的で出掛けたのでこの大きな鞄を付けました。

    「良い物を長く使う」、割合昔から僕はこのタイプです。
    経験上、中途半端な物は結局後悔をすることになるので
    自分の出来る範囲で本当に気に入った物を求めるようにしています。

    「ものをつくる」ということ、これは一足飛びには出来ません。
    長い年月を掛けて作り上げてきたことを
    目先の数字だけで判断することは出来ないと思います。
    特に「ものつくり」に携わる人とその技術はお金には換えられません。
    人が育つこと技術が伝承させることの大切さに
    皆が関心を寄せる必要があると思います。

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  3. こんばんわ。
    パシュレイはmincoroさんのブログを読むまで知りませんで”お城製のモールトン”だとばかり思ってました。

    ”ものつくり”言葉にすると色々な意味にとれますが、職人的な響きを持ったものは今の日本では望めなくなって来ていますね。
    利益追求型の社会になってしまいましたからね・・・
    国際社会で競争して行くために他国に負けない製品を次から次へ生み出さないとならない仕組みでは経験がものをいうようなものは作りにくいですよね
    今の日本の大手企業では「この人じゃないと駄目」というのは望んでませんからね「誰でも同じように」という姿を望んでいるようでは・・・

    自転車屋も昔は店の裏でロー付けしてくれたりしましたけど、今では・・・
    (パーツ組み立てでもやらない店よりは良いですけどね)

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  4. 羽ぴょん 様

    こんばんは
    何時もコメントを頂き有り難うございます。

    パシュレイは僕もモールトン経由で知ったので
    羽ぴょんさんとあまり変わりません(笑)

    よく日本はアメリカ型社会を追従していると言われますが、
    アメリカでさえ日本より「ものつくり」の精神は健在だと思いますし
    その点には皆が敬意も表していると思います。

    特に日本では国、会社、経営に携わる人々の
    「ものつくり」の重要性に対する意識は低いと思います。

    誰でもよいというのは個性を有する人間に対して大変失礼な話で
    極端な話、人を人とも思っていないということの表れだと思います。
    また、個人の重要性、そして命の尊さ、
    この点に関して日本は昔から怪しい思います。

    理想論かもしれませんが、
    個性(タレント)を活かせる国や社会の仕組みがなければ
    この国の未来は決して明るくはないと思います。

    昔の自転車屋が裏でロー付けは残念ながら見たことありませんが
    鉄で出来た自転車が少ない状況で自ずと減っていったのでしょうね。
    昔、乗っていた自転車のディレーラーハンガーが折れてしまったことがあって
    困っていたら知り合いの人が溶接してやるよ、と言って直してくれました。
    アルミやカーボン等の自転車だったら無理でした。

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  5. たしかに今の日本人は、安いものばかりを重視して、
    良い物にお金を掛けようとはしないですね。
    手が掛ってる良い物が高いのは、それなりの理由があるのに
    高いというだけで、敬遠しがちです。
    日本のブランドより、海外のブランドを尊ぶのも、日本人のミーハーなところだと思います。
    自転車は仕方ないですけどね~(笑)

    日本人の技というものを、もっと知るべきだと思います。

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  6. ゆるポタ 様

    こんばんは
    何時もコメントを頂き有り難うございます。

    今は特に安売りの品に皆の関心が集まっているように思います。
    また、高価な物がイコール良い物とは僕は思いません。

    日本の企業に限りませんが、
    労働賃金の低い国を次々探して生産させるという
    今のやり方にも限界があると思います。

    技があるということは素晴らしいことです。
    特に我々が知らない所で人知れずコツコツと地道に
    凄い事をやり続けている人々は沢山いらっしゃると思います。
    このような所にスポットライトが当たる社会、
    このような方々が普通に生活する事が出来て
    次の世代にも継承される国であって欲しいと願っています。

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  7. こういう小さな小屋のようなところが加工所というのも驚きですが、他にはない技術を持っているところはいつまでも必要とされていくのでしょうね。

    でも、必要とされている割に恩恵を受けていない。

    かつかつで経営されているところが多いと聞きます。

    資源が少ない日本が生き残るためにはこういった独自の技術が必要なのにそこが発展するような土壌がない。

    まったくもって矛盾しておりいつかしっぺ返しを食らいそうな気がします。

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  8. tac-phen 様

    こんばんは。
    コメントを頂き有難うございます。

    日本のものつくりの現場は本当に瀕死の状態にあると思います。
    仰る通り、資源のない日本で、ものつくりが出来なくなってはこの先、この国がどのようになるのか?
    大変な危機感があります。

    ものつくりの現場にいる人々が不遇な状況におかれて
    日本国内では食べていけません。
    そして、その技術は海外に流出しています。
    机に向かって金勘定をする人ばかりでは金勘定も出来なくなることがもう直ぐ分かるはずです。

    絹織物産業から自動車産業。明治維新以降、西洋に追いつき追い越せで外貨を稼ぐことがよしとされてきた日本の歩みは本当に正しい選択だったのか?政権交代をするこの時期に再考し、今後の日本の行き方について皆が議論をして熟考した後、新たな歩みを選択をする時がきていると思います。

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  9. >このような所にスポットライトが当たる社会、
    このような方々が普通に生活する事が出来て
    次の世代にも継承される国であって欲しいと願っています。

    ここは全く同意見です。そう思いますし、そういう風な
    流れに我々がするべきと思います。

    若いと言う事は過去を知らないと言う事です。過去を知る
    為には歴史を学ばなければ行けないでしょうね。最近の人は
    過去にもの造り日本がまるであったかの様な感じで話しますが、
    どうも年配の人はそう言う風な方は少ないですね。昔(これも
    具体性がないw)もの造り日本と言う風に自慢出来たのかどうか
    前々から疑問がありますので、色んな年配の方に聴くと、
    どうも皆さん舶来製品の方が良かったと言います。実態のない
    もの造り日本神話は誰が言い始めたのか大変気になります。
    有名な電機メーカーの商品もミス、回収が多かった様ですし、
    自動車も外国では受けは良く無かった様ですし・・・。
    寅さんの口上でも舶来製を良い見本にして、それに迫るのが
    この商品、それを今回特別にお分けしましょう!!
    と言うような内容ですし、どうも輸入品を珍重してた様です。
    今でもその傾向の延長やと思います。昔はただ単に一般大衆の
    多くが輸入品に手が出なくて、日本製品を使った居たのでは
    ないかなと思います。
    本当にもの造り日本と言って良いのかな????

    え、そんな本気の書き込みは要りませんか(爆)
    えーっと、かつて在ったもの造り日本カンバック!
    ディスカバージャパン!! これでオケですよね??

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  10. Xinyi Folders 様

    何時もコメントを頂き有難うございます。

    仰る通り「日本のものつくり」について疑ってみる必要はあるかもしれません。
    また、創造性ということを含めて考えると他国に比べて劣りますね。

    確かに粗悪な製品を造っているところもあるかもしれませんが
    曲がりなりにも僕自身、製造業で食べてきましたので
    その実感として言えることは
    現場で働く先輩方々の豊かな経験と丁寧で細やかな仕事ぶりを見ていると
    「日本のものつくり」を実体のない神話と斬り捨てることは出来ません。
    他方で海外の留学生達ともお話をする機会がありますが
    彼らも細やかで配慮のある日本の製品が大変魅力的に映っているようです。

    今回の記事は人から聞いた話ではなく
    現在自分の身に起きている切実な問題について書いたつもりです。

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  11. >曲がりなりにも僕自身、製造業で食べてきましたので
その実感として言えること

    意外ですね、ずっと研究職かなんかだと(勝手にw)思って
    いました。でも今は違うんでしょ?今もそうやったんですか?

    >ものづくり日本と言われていたのは何時頃までだったのでしょう?

    こう言う風に書かれてはるので、てっきりこの言葉に疑問を
    持ってると思いました。なんせ、僕ら若い頃は「ものづくり日本」
    みたいな言葉は聴いた事がなかったですし、そう言う意識を回り
    で持ってる人間も居てなかったし、変な話先進的な考え方の
    人間の中には、高度に進む産業王国の姿を危惧していたくらいで
    生産力に対しての明るい未来と言う風潮でも無かったと記憶して
    ます。もっと言うともの造りの推進の結果が環境破壊とかです。
    けど最近は誰もそんな話を出して来ずに盲目的にもの造りの
    総体論になり、ちょっとそれはと言う冷静な話をあんまり
    聴いた事がないです。それで、ああ書きました。けどmincoroさん
    が現場でご苦労されてるんでしたら、それは又次元の違う話やと
    思いますんで、その辺でお気にされたら申し訳在りませんでした。
    もう一度謝っておきます、すいませんでした。

    もの造りに関して言えば、尺貫法とか三桁から、四桁に何の
    疑問もなく廃止を押し進めて来た我々の世代とか(勿論先輩も含む)
    そないに大した事言われへんと思います。今に成って急に瓦解
    したのではなく、大分前から言われてました。私は若い頃に
    西成で(東京の山谷の様な所。人足寄せ場)こう言う事を勉強したり、
    日雇い労働をして研究、実践していました。そんな中で意外やったん
    は現場で年上の方々から聴いたのは、万博の頃から可笑しい流れや
    と思ってる人は結構おった、けどこう言う流れで大衆は来たと
    言う事です。
    そんな事を言いながらも今頃になって、万博の頃を高度経済成長の
    発展期でもの造り日本の黄金期みたいに言うのはちょっとなぁ、
    と言う風に思います。これは、mincoroさん個人がどの時代を
    指してるか解りませんが、私がこの耳慣れないもの造りと言う
    言葉を聴く時に良く例に出される時期はこの頃、万博からバブル
    終焉位迄を指すと思えるのが多いからです。

    なので、自分はこういう考えとは大同団結せずに自分の道を行く為に
    二十年前から、石けんしか使ってませんし、勿論車も乗らず、
    クーラーも使わず、積極的に着物を着て、伝統産業や伝統芸能の
    促進に日夜協力しています。出来れば尺貫法を復活させたい
    くらいですよ。僕の世代でここ迄やってる人間にはあんまし
    会うた事はないです。ええとかワルイは置いといて(爆)

    ブロンプトンと言うのは自分に取ってはそう言うものも
    含んだ乗り物なんです。

    もの造りの為に捨てたものも実際多いので、その辺を考察せんと
    今の不況とか(いや、もっと言うと政経なんですけど)中々
    変われんでしょうね。

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