TSRの肖像 馬の背に乗る(多摩湖自転車道)


 武蔵野市関前5丁目の交差点から西北へ暫く走ると片側が小高い土手の路になっている不思議な岐路に差し掛かりました。この道は東大和市の多摩湖(村山貯水池)から武蔵野市関前の境浄水場まで至る水道管(大正12年から14年施工)の上に設けられた自転車歩行者専用道路で、狭山・境緑道または通称、多摩湖自転車道と呼ばれています。
 写真の区間は未舗装の小高い路が歩行者専用で自転車は舗装された下の道を走ります。始めは下の自転車道を走っていましたが、ふと小高い土手の方を見上げると透き通るような冬の青空!土手の上に自転車をのせて青空を背景に写真を撮りたいと思いました。
 何故このような小高い路になったのか?この辺りは地面が低く村山貯水池から引いた水が境浄水場までスムースに流れないことから土を盛って高さを調整した結果、小高い路が出来たようです。つまり低い自転車道が元の地面で小高い路の下には水道管が通っています。土を盛って出来た小高い路がまるで馬の背のように見えることから何時しか此処は“馬の背”と呼ばれるようになったそうです。


 “馬の背”から更に2キロくらい西へ進むと右手に懐かしい風景が飛び込んできました。此処は東京都小平市にある“小平ふるさと村”。小平は江戸時代初期の玉川上水の開通にともなって開発が行われた新田村落でした。かつての面影が大きく様変わりしていく中、小平の郷土の歴史的文化遺産を後世に伝えていくために再現されたのが“小平ふるさと村”です。中には江戸初期から中期の建物を復元した開拓ゾーン、江戸後期の建物を復元した農家ゾーン、明治以降の近代ゾーンと各時代の建物が並んでいます。
 残念ながこの日は正月休みで中に入ることは出来ませんでしたが(入場は無料)旧小川町郵便局(明治41年)の前に自転車を停めて写真を撮りました。生け垣の緑と懐かしい赤いポスト、朱色に塗られた郵便局の大きな屋根、とても調和がとれています。かつてはどこにでも見られた日本の美しい風景です。
 小平市には昔ながらの丸いポストが30本あって(都内の自治体の中では最多)今でも現役で使われているそうです。また東京都内にはこのようなポストが250本も残っていることを今回知ってちょっと驚きでした。写真のポストも飾りではなく実際に使われています。

 多摩湖自転車道は坂道がありませんが西武多摩湖線の武蔵大和駅を過ぎてから多摩湖下堰堤の入り口まで上りが続きます。ここまで自走をしてきて多摩湖に到着する寸前に坂道があることは女性には少々厳しいかもしれません。ブロンプトンなら無理せずに押して上がるのもいいでしょう。
 坂を上がって多摩湖下堰堤の入り口から多摩湖に入ると今までの見てきた風景とは全く異なる風景が待っています。大きく静かな多摩湖を見ると解放されます。同時にずいぶん遠くまで来てしまったような充実した気分になります。ちょっとうれしい瞬間です。


 自転車の向こうに見える円筒の建物は大正14年に建てられた取水塔です。源水は玉川上水の始点でもある羽村上水堰(はむらじょうすいせき)から地下導水管によって導いています。この取水塔は日本で一番美しい取水塔とも言われており、煉瓦造りの円筒に丸いドーム状の屋根が特徴です。
 上半分が黒くなっている写真の大きな石柱は昭和2年の堤体完成当時の親柱です。太平洋戦争時に爆弾から堤体を保護するための耐弾層に下から半分程が埋まり露出部はカモフラージュするためにコールタールを塗っていたため上半分が黒くなっています。当時の土木建築技術を後世に伝える貴重な近代土木遺産として、ここに保存展示しています。


 多摩湖の正式名称は村山上貯水池・下貯水池で湖は2つに分かれています。村山上貯水池は大正13年に村山下貯水池は昭和2年に竣工しました。写真の場所は村山下貯水池の南側、多摩湖下堰堤からの眺めです。昨年4月に堤体強化工事が完成したばかりで堰堤はとても綺麗です。
 多摩湖は開放感を味わえる眺望と共に静けさが心地よくとても癒されます。休憩の後、多摩湖を1周(約10.2キロ)することにしました。


 多摩湖外周に沿って多摩湖自転車道は続いています。先の多摩湖下堰堤の天端通路を渡って北側から多摩湖を1周することにしました。走りはじめると暫く上りが続きますが自転車歩行者専用道路なので自動車を気にする事なく快適に進んでいけます。この自転車道は多摩湖までの道程は歩行者が多くまた一般道の横断箇所にある車止めの数が多いことには閉口します。正直「自転車道」と呼ぶのは如何なものか?と思っていましたが多摩湖を1周する区間は歩行者が少なく車止めもなく快適に自転車を走らせることが出来ます。適度にアップダウンがあって飽きることはありません。平坦な道が続く多摩川サイクリングロードより楽しめます。何より走っていて心細くなる程人が少ないことも気に入りました。特にコース終盤に続く下り坂は凄く気持ちよく走れます。唯一気になったことは所々現れる荒れたアスファルトの路面でした。サスペンションが付いていないブロンプトンで走ると少々疲れるかもしれません。
 左の写真は忽然と現れる巨大な西武ドーム。プロ野球、西武ライオンズのホームスタジアムです。先の多摩湖下堰堤からも銀色に輝く異様な屋根が小さく見えるのですが間近で見ると更に異様です。米のSF映画インディペンデンス・デイを思い起しました。
 気持ち良く多摩湖を1周した後、来た道を戻りました。右の写真は小平と花小金井の間にある農家の建物、夕日に照らされた姿は懐かしい昭和の風景のようでした。

 今回初めて多摩湖自転車道を走ってみましたがこの道は小径車に最適なコースだと思いました。先ず多摩湖までは殆ど坂がありません。その間に見所も多く単に自転車を走らせる退屈なコースではありません。そして歩行者と自転車止めが多いと言うことは裏を返せばピッタリしたウェアを着て激しいスピードで走り去るロードバイクの姿もありません。小径車で安心してのんびり走れます。コース終盤に多摩湖の素晴らしい眺望が待っているということも感動があります。多摩湖を見た後、自転車で気持ち良い汗をかいて帰りたい人は多摩湖を1周すればよいし、そうでない人は最寄りの武蔵大和駅(西武鉄道多摩湖線)から輪行で帰れます。とても良い道に出会いました。次回はカミさんとブロンプトン2台で行こうかな?そうそう“小平ふるさと村”に限定50食の“武蔵野手打ちうどん”というのがあるらしいのでこれで釣ってみましょうか(笑)

コメント

  1. 羨ましいー! なんですかこの青空は!
    何年かに一度は、気候が逆になってもらいたいものです(^^ゞ
    こちらは、毎日、雪、寒い、雪、寒い、ですよ・・・

    私も多摩湖が気になりますね。 距離も手ごろですね(笑)
    やっぱりポタは、人がいない、落ち着ける方が、断然楽しいですから^^

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  2. ゆるポタ 様

    何時もコメントを頂き有り難うございます。
    そちらは毎日雪のようですね。
    天気予報でそちらのお天気は何時もチェックしてますよ(笑)
    雪上ライド、何てのもカッコいいと思うのですが・・・。
    危ないのでやめてください。冗談です(笑)

    多摩湖、久しぶりに行って良かったですよ。高校生の時以来です。
    勿論その時は自転車ではありませんが。
    今の住まいから往復で恐らく50キロ弱なので程よい距離です。
    この辺りは「となりのトトロ」の舞台になった場所と言われているんですよ。
    今度は多摩湖から羽村まで行ってみたいと思います。

    人が少ないことはいいですね。
    1人で自転車に乗っている時間がとても好きです。
    自転車に乗って良かった!って思います(笑)

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  3. こんばんは。
    丸いポスト風情があってイイですねぇ。
    東京にはまだ250本も現役活躍してるのですか。
    奈良ではもうあまり見掛けなくなりました。何でかな?
    多摩湖、1周10キロだと丁度良い距離じゃないですか?
    5キロだと短いし、15キロだとちょっと長いかもしれないし。
    1人で自転車に乗ってる時間ってイイですよね。
    何か周りの景色が全部自分の為にあるような気がしてきて、日頃の疲れも全部吹っ飛んでしまう。。。
    止められませんネ(笑)。

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  4. wembley 様

    こんばんは
    何時もコメントを頂き有り難うございます。

    僕も東京にこのようなポストが250本もあることに驚きました。
    しかし良く考えて見ると僕の生活圏内にも3本くらいあるのです。
    古いポストは奈良の方が沢山あるように思えますが不思議ですね。
    意識をして周囲を眺めると結構あるかもしれませんよ!

    以前wembleyさんが走られた琵琶湖と違って多摩湖は程よい距離です(笑)
    また此処は人工湖なんですけどね。

    自転車は数人で走ることも勿論楽しいですが1人で走っている時間って僕は特に好きです。でも良い風景の中を自転車で気持ちよく走っている時って同時に誰かと一緒にこの感動を共有したい!って思うんですよね。身勝手なもんです(笑)

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  5. エエ感じですね。景色も青空も!
    人がすくないのも良いですね。
    私も房総半島を走っていてそう感じました。
    一人で気持ちいいと誰かと共有したい気持ちもわかります。
    ただ、なかなかその価値観をもっている人がすくないんですよね。
    やっぱり一人で自分と会話しながら走るのが楽しいのかも?
    ん〜どちらにしろ身勝手やな〜。^^

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  6. kirima 様

    こんばんは
    何時もコメントを頂き有り難うございます。

    人も少なくエエ感じでしたよ。

    >私も房総半島を走っていてそう感じました。

    やはり皆同じように感じるのですね(笑)

    >ただ、なかなかその価値観をもっている人がすくないんですよね。
    やっぱり一人で自分と会話しながら走るのが楽しいのかも?

    価値観を持っている人は少ないですか?
    気持ち良いと感じる所は人によって微妙に違うかもしれませんね。
    1人で自分と会話しながら走るのは僕も好きです。
    同時に最近独り言が多くなってヤバい!と思うこともあります(笑)

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